不倫相手の実家で慰謝料をチラつかせて表情を凍りつかせてみた話


一回目の浮気相手、麻里恵との対面を終えた一週間後くらいに、麻里恵の実家に夫を連れて訪れました。

もちろん麻里恵も同席してもらって、ぺんね、ぺん太、麻里恵、麻里恵父、麻里恵母、という、最悪のペンタゴンを形成してちゃぶ台を囲み、異家族間会議が始まりました。

麻里恵母がお茶を用意している間、麻里恵父からは開口一番丁寧に謝罪されました。

「この度はうちの娘が大変なご迷惑をおかけして、誠に申し訳有りませんでした。」

深々と頭を下げられたので、この頃には時間が経っていたこともあり、さすがにわたしの中で、だいぶ頭に登った血が引いてきていました。
ぺん太もいたたまれなくなったのか頭を下げ、

「いえお父さん、わたくしが麻里恵さんをお誘いしたからこそ起こった過ちでして、全てわたくしの責任です。」

すると麻里恵が

「そんな…あの…私も…」

と、何を言ってよいものやら言葉に詰まりつつとりあえず頭を下げる。

麻里恵はぺん太に、ぺん太は麻里恵父に、麻里恵父はぺんねにと、謝罪の連鎖が出来上がっており、なんとも言えない重苦しい空気が、俯瞰で覗くと逆に笑える劇場と化していたと思います。
というか麻里恵はぺん太じゃなくてわたしに頭下げろよというところですが、それはもう表情や言葉から完全にパニクっているのが分かるので、まあもういいやという感じです。

そんなやりとりをしているうちに、お茶とお茶菓子を持った麻里恵母も参戦し、ご両親の謝罪が一通り済んだところで、いえいえご両親に謝ってもらいたくて来たんじゃないんでどうか頭を上げてくださいと、とりあえずけじめとして、事の次第を正確にお伝えして、今後こういうことが絶対に無いように、うちの夫と麻里恵さんと、二人にしっかり心に刻んでもらうためにお話をしたくて来ましたと、伝え、私たち夫婦の状況や事の発端、成り行き、浮気がバレるところから今日に至る話を、しくしくと泣きながら鼻をすする麻里恵とうつむくぺん太にわたしが時々確認を入れつつ細かく説明して、

「そういうわけで、今日はとにかくご両親にこういうことがありましたということをお伝えして、夫は夫で嫁と生まれてくる子供を持つ身でありながら、麻里恵さんの好意を利用して一時の遊び心を満たしたこと、麻里恵さんは麻里恵さんで結婚している相手と知った上で夫をたぶらかしたこと、それを麻里恵さんのご両親の前でしっかり認めてもらって反省してもらいたいなと思っているんです。」

と〆ると、神妙な面持ちで頷く両親の顔も見れないといったふうに麻里恵が

「あの…たぶらかす…というようなつもりでは無いんですが…その…ほんとに後悔…してて…あの、すみませんでした…」

と改めて頭を下げました。
”じゃあどういうつもりだったんだ”というツッコミは長くなるので飲み込みました。
続いてぺん太も

「麻里恵さんと嫁の心を深く傷つけることをしたことを、また麻里恵さんのご両親にまでこのように大変な心配をおかけすることになってしまったことを深く、反省しております…」

というようなことを言っておりました。
麻里恵さんと嫁って、嫁と麻里恵さんって言えよという些細なツッコミも、疲れてたのでどうでも良くなりました。

「それから…」

と前置きしてから、麻里恵への最後のプレゼントとして

「慰謝料に関してですが…専門家と…相談したりしてみたり…したのですが…」

「わたしたちは子供もいますし…夫が一時の迷いで浮気をしたということで…わたしは離婚することは…考えておりません。こういった場合…弁護士さんなどの話では…まずは浮気相手の…つまり麻里恵さんに…慰謝料を請求しましょう。となるそうなんですが…」

とたっぷり間を使って麻里恵の肝が冷える音なき音をじっくり味わった後で

「今回は請求は致しませんことに決めましたのでご安心ください。」

と言い渡しました。
別に請求するようなことはチラッと考えただけで基本的に頭にはなかったのに、専門家に相談したなんて嘘をちらつかせて相手の心を揺さぶるあたり性格悪いですよね。

麻里恵の表情が凍りついたところから、じんわ〜っと溶けていくのを十分楽しんだので、ヨシとします。

そんなこんなで麻里恵の家庭訪問はこんな感じに終了したのでした。

ちなみに終始平身低頭だった向こうの親御さんですが、特に麻里恵母は、帰り際わたしを見る目が、鬼か何か恐ろしい物でも見るような怯えた目をしていたので、実家まで押しかけてくるモンスターみたいな女だと思っていたのでしょう。
実際わたしは、あの時、妊娠中に浮気されたというショックから、モンスターにでもなっていないと逆に正気を保てないというような精神状況でした。

でも麻里恵はきっともう二度と、しょうもない火遊びを既婚者としようという気は失せたと思います。
そういう意味では、良い勉強、苦い苦い良薬となったのでは無いでしょうか。



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